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京都市上京区に住む平田文男さんは、現在77歳。現役の職人だ。

しかも平田さんを含め、現在2人しかその手技を伝える人がいない、という貴重な存在。
平田さんが手がけるのは、京釣竿。
普通の釣竿と違い“京”と形容されるだけあって、その優美な姿は、手仕事のなせる技としか言いようがない。

平田さんが作るのは竹の釣り竿だけ。
なぜなら「魚を釣った瞬間のスリルが違います。これはカーボンでは絶対に味わえません。竹は生き物ですから、微妙な魚の動きもすぐに手元に知らせてくれるんです。
まあ言うたら、魚と対話ができるのが竹竿なんです」と平田さん。
50年間技を磨いてきた職人の手から生まれる釣竿を使うと、ほかの竿が使えなくなる、と古
くからのお客は言う。
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金箔を施した工芸品のような竿。

精度の高さとともに、平田さんの釣竿が突出しているのは、姿の美しさだ。
最近になって平田さんが独自に作り始めたという竿を見せてもらった。
うっとりとした漆の艶が光る竹の竿には、美しい金の模様が施され、まるで工芸品のよう。
水辺に持ち出すのが惜しいくらいに雅な竿だ。

「竿は使うた後に押し入れにしまい込む方が多いと思いますが、それでは竿のためにもようありません。そこで部屋に飾っても見栄えのする竿を作ろうと、いろいろ工夫したんです」と平田さん。
70歳を迎えてもなお衰えることのない探求心。
「職人かて、平成の世にいつまでも昭和の頭で仕事してたらあきません。化学製品に負けへん竿を作ろうと研究した結果、こうした竿ができました。おかげさまでお客さんには“この仕事は傑作ですな”と言うてもらいました」。
金箔を張り、十数回にわたって漆を塗る。平田さんはその作業をすべて一人でこなす。
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細かい工程を一人で黙々とこなす。

平田さんの作業工程はこうだ。
まず滋賀県から3年竹を仕入れて、使える竹だけを選別する。
そして1カ月干し3年間寝かす。
その後寸法通りに切り、火にあぶって竹を矯め、竹の中心部に穴を開ける。
次に表面の薄皮をめくって竿を継げるように細工し、ペーパーで磨き、6回〜10回漆を塗る。

細かい作業が続くため、注文の品ができるのは約1年後だそう。
値段は1本10万円から100万円が相場だと言う。
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ぬくみのある仕事がしたい。

元々お父さんが釣竿職人で、その2代目になる平田さんだが、お父さんの存命中は釣竿職人になるなど、考えもしなかったそうだ。
「親父が生きてた頃は、社交ダンスに夢中で仕事がイヤでイヤで。ところが親父と付き合いのあった釣具屋から『あんた息子やねんから竿くらい作れるやろ」と言われて急に竿を作ることになったんで
す』。
当時西陣の機織りをしていた平田さんだが、25歳で転職をすることに。
ところが、お父さんから仕事を学んだ訳でもない。釣具屋やお客の声を頼りに、独学で技術を身につけていった。
「こんなことやったら親父に習とったらよかったと、なんぼ後悔したことか」。

しかし努力の甲斐あって30歳には評判の職人に。ところがカーボンの釣竿が出回る頃になると、竹竿はぱたりと売れなくなり、釣竿職人の多くが職を失った。
しかし平田さんは生活のためにアルバイトをしながらも、細々と竿作りを続けた。
「心を込めた、ぬくみのある仕事をしたいと常におもてます」
と柔和な笑顔で語る平田さん。今、群馬県出身の若者が平田さんを師匠と仰いで技を磨いているそうだ。

テレビで平田さんの仕事ぶりを見て、わざわざ京都に越してきて職を探し、現在休日を利用して
修業をしているらしい。
平田さんの手技の心は、これからも脈々と受け継がれていくことだろう。
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| 平田文男 京都市上京区六軒町通上立売下ル TEL : 075-461-8589 |
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