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 また、松田優作ではないが、クライアントには美女が多く、場合によっては、思わぬチャンスに恵まれることもある。

「素行調査の依頼者は99%が女性で、なぜか美人が多い。ただし、探偵業で失敗するのは、このクライアントに手を出してしまって、夜逃げにいたるパターン。これは命取りになる」。

幸いにして、X氏にはそうしたチャンスはなかったようだ。
法に触れるギリギリのライン

 ここまで紹介すると、探偵業は非常にオイシイ商売のように聞こえるが、決してそうではない。

「24時間365日休みなしの商売だからね。繁盛していた頃は『もう金はいい、頼むから寝かせてくれ!』と思ったこともあった」とか。

しかも、不法侵入など法にふれるギリギリのラインでの仕事である。

危険度もかなり高い。

 けれど20年間続けてこられたのは、時にココロの琴線に触れるような事に出合っていたからかもしれない、とX氏は振り返る。

浮気調査によって愛人の存在がばれたことで、夫が無事に妻の元に戻り、夫婦関係が修復できた、と礼状をもらうとき。

あるいはちょっとした行き違いで連絡がとれなくなった恋人を捜してくれ、という依頼では、恋のキューピット役を果たすこともできた。

人生のひだに関わる商売だからこそできる体験だ。

逆に言えば、見たくもない人間のエゴや、ウソや虚飾に彩られた陰の部分を目の当たりにすることも数知れない。だからだろう。

「もう二度と探偵業はやらない」とX氏は断言する。
探偵の七つ道具を探偵する

 ところで探偵といえば、どんな商売道具を持っているのか気になるところ。

X氏によると「虫さされの薬、蚊取り線香、カイロ、カメラ、無線機、尾行装置、単眼鏡」が七つ道具だとか。

言うまでもなく、前の3つは、何時間かかるかわからない尾行時に必要なグッズ、カメラは証拠を押さえるため、無線機、尾行装置、単眼鏡は相手の居場所を突き止めるための道具だ。

特に尾行装置に関しては、電気・機械に強いX氏が開発したオリジナル尾行装置があり、それが今も市場で出回っているほどの“ヒット商品”だとか。

「法に触れるものだから特許はとれない。取れていたら、ひと財産になっていたかも」と笑う。

 そしておもしろいのが単眼鏡。

双眼鏡では、それをのぞいている姿が周囲にばれてしまうが、単眼鏡ならさりげなく片手で使える。

だから単眼鏡なのだ。

X氏の話を聞けば聞くほど「誰にでもできそうで、誰にもできない商売」の意味がわかってくる。

その意味においては、探偵業で名を成すことができれば、どんなビジネスでも成功させることができるのではないだろうか。

おそるべし、探偵業!

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