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第2回 官と民の関係

 公民連携(官民協働)はさまざまに定義されるが、官と民の関係、リスクとリターンの設計、契約によるガバナンスが大きな柱となる。
 官と民の関係で言えば、あるいは政府のあり方を考えると、大きな政府か小さな政府かという選択が、公民連携の前提となる。今は少ない社会主義国を除き、北欧の高負担・高福祉が大きな政府の典型となる。政府が大きければ、それだけ民の領域が狭くなる。政府の大きさについては、政府への信頼性や国民の自助への意識などに左右され、一概に大小どちらがよいと言うことはできない。しかし、日本では、明治維新以来の政府・官主導の富国強兵路線や中央政府の主導による戦後の復興と高度経済成長の様々な弊害の反省により、近年は小さな政府が望ましい方向性として認識されてきた。公民連携の先進国である英国も70年代の労働党政権による大きな政府を反省し、79年成立のサッチャー政権移行後は、小さな政府が推進された。小さな政府は炭坑や水道、石油・ガス、電力、航空、バス、鉄鋼等の国有化など国家による経済の介入を改め、財政規律を正し、民営化と競争原理を導入し行政の効率性を向上させた。経済全体に占める公的部門の役割を減少させ、「官から民へ」を加速させた。
 サッチャー政権の小さな政府への路線を促したのが、英国の行政学者であるクリストファー・フッドが創始したNPM(New Public Management)の概念である。NPMは民間経営の手法と新制度派経済学からなり、特に民間経営の7つの原則を行政に取り入れる。7原則とは、実践的マネジメントにおける経営トップの裁量と責任、業績に関する基準と指標、アウトプットと結果の重視、公的組織の細分化、競争原理の導入、顧客志向・サービス志向・権限委譲・柔軟性等の民間経営のノウハウ、資源使用の規律と節約である。これらの手法は従来の行政には見られず、まさに新しい行政の経営であり、納税者・市民本位の効率的な行政サービスの実現を意図するものである。
 日本では中曽根政権による国鉄と電電公社の民営化が、英国のサッチャー政権、米国のレーガン政権の小さな政府路線と軌を一にしている。また、日本における公民連携の典型とした登場したのが第三セクターである。
 第三セクターは官の公益性と民の効率性がともに実現できると期待され、インフラプロジェクトを中心に官(国・自治体)と民間企業が共同出資して設立された。地域興しで成功している事例はあるものの、多くは赤字となり経営が行き詰まっている。従来の公共事業は官が全面的にリスクを負っているのに対して、第三セクターにおいては寄り合い所帯で責任の所在が曖昧となり、官と民のリスクの分担が明確ではない。このような組織・体制では、経営が難しい局面に至ると迅速に適切な対応が取れない。そもそも事業性を充分に検証せず、事業選択自体を誤っているケースも少なくない。官と民のよさを取り入れようとした目論見は、むしろ官と民のもたれ合いとなり、かえって第三セクター故の破綻となってしまった。第三セクターの債務は、結局は市民・国民の負担となり、税金の無駄使いにほかならない。
 第三セクターの陥りやすい失敗を避ける方法はないものであろうか。体制と事業プロセスにおける官と民の関係をプラスになるよう律すればよいわけであるが、成功している第三セクターでは官か民のどちらかが主導権を取りまたより大きな責任を負い経営者のリーダーシップが発揮されている。前提として、事業性が確かなことは言うまでもない。
 第三セクターの問題をふまえると、官と民の関係をいかに構築すべきかが問われてくる。その有効なアプローチが、公民連携の定義で示されるリスクとリターンの設計と契約によるガバナンスである。

株式会社公共ファイナンス研究所
代表取締役 阿部博人


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