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| 簡単そうに見えてコツが必要、南国の太陽が昇る海辺のイメージ。 |
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| 【テキーラサンライズ】Tequila sunrise |
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車道を隔てた坂道の向こう側、ロベが自転車で勢いよく下って来る。
ボクサー留学生の彼が、アルバイト先の製材所からの帰り、下りの坂道を加速しながらペダルを漕いでいる。
「ミヤザキッ!」と先に向こうから手を振って大きな声でボクを呼んだ。
「よう、ロベ」ロベルトをいつもニックネームで呼ぶボクの方を見ながらも、ペダルは廻し続けている。
危ないと思った瞬間、歩道の段差にバウンドした車輪が、着地の瞬間バランスを崩し、自転車は前方に大きく一回転してロベもろとも歩道に投げ出された。
道路を横切って近寄ると、半パン姿の、インドネシアからやって来た黒人の膝や太ももに血がにじんでいる、擦り傷だが大した傷ではなさそうだった。
「ロベ、大丈夫か?」苦痛の表情がやや和らぎ、首を左右に振りながら「オゥ、ダイジョーブ」と立ち上がり、自転車を起こした。
「こんな下りの坂道でスピード出したら転ぶに決まってるだろ」と日本語で話す内容を、恐らく「スピード」という単語しか理解できていないと思われる彼は「オッケー、少し止まります」と、おかしな言葉遣いで、しかし言いたい事は通じ合えたようだ。
「ハハッ、じゃ少し止まろうか、日曜だからトレーニング無いんだろ?」と彼の言葉を真似て、通りを隔てたカフェバーに視線を振った。
「ナイス」そう言って、車が激しく往来する道路をいきなり横切ろうとし、急ブレーキを踏んだ車に手を上げて彼は、そそくさと横切った。
多分、自国での交通習慣だろう。
黒人だったから運転手は何も言わずに走り去ったのだと思う、怖いというより、いきなり飛び出た真っ黒な人間に、呆気にとられていたに違いない。
「ビールにするか?」と聞いたが、ロベはウエイトレスを見るのに夢中で、注文を聞きに来たその彼女に「Tequila sunrise」と正確な発音で注文してから「ハイ!ゲンキデスカ」と、お決まりの挨拶をはじめた。
『向こうでは女性に声をかけなければ、かえって失礼にあたる』というインドネシアに滞在した事がある友人の言葉を思い出した。
「ミヤザキ、BEER?」と聞かれ「そうそう」と彼女の顔を見て応えた。
「粋なもの飲むんだな」という言葉を理解してはいないだろうが、そのグラスを持ち上げ「ワタシの国の太陽の色、ミヤザキも来なさい」といって一口飲んだ。
「夏になったら連れてってくれ、カレーが美味そうだな」そう言ってビールを飲みながら、そのカクテルのグラデーションのような海辺の夜明けを思い描いた。
彼の足元を見ると、さっきの傷の血は乾いていた。
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| written by Ipaken |
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