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ベースがジン、そこにシロップとレモンジュースを加えるカクテルは、多くのバリエーションを持つ。
そしてこのカクテルもバリエーションが幾つかあり、卵黄の代わりに卵白を使えば「シルバーフィズ」、卵を丸ごと一個使えば「ロイヤルフィズ」になる。
卵抜きは「ジンフィズ」、そしてジンの分量を変えると「トムコリンズ」と変化自在。 |
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| 【ゴールデンフィズ】Golden Fizz |
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その朝も、マリオはパンツの裾をマスキングテープで巻き、日本から持って来た折りたたみ式マウンテンバイクに乗って仕事に出かけた。
テープは、同居人である塗装工のヨンからもらった物だ。
タイ出身のヨンが、ギアの油で汚れた裾を見て「これを巻いて乗れ」と、出掛けに自分の道具箱から取り出して、投げてよこしたのが先週末の朝だった。
程よい弱さの粘着力で、お気に入りのダウンの埃取りにも使える。ヨンはとにかく気が利く男である。
一足先に、近くの仕事場まで歩いて出掛けたヨンが、交差点で空いた左手をポケットに突っ込んで信号待ちをしているのが見えた。
バイクで走って来る俺を視界の隅に捕らえて、左手を上げたヨンに、通り過ぎざまにパチンとハイタッチし、「じゃ7時にな」と言いながら彼の前を走り過ぎた。
交通マナーの良くないタイから来たヨンが信号待ちをしている。その姿が不思議でならなかった。
なぜなら、多くのニューヨーカーは信号を守らないからである。歩行者も自転車も信号が何色であろうが、車さえ来なければ道路を横切る。
しかし車が来ないから渡るというのは、それはまだ律儀な方だと後に気付かされることになる。
ニューヨーカー達は、車が来ようが信号が赤であろうが、行き交う車の合間を縫って、道路をジグザグに横切るのである。
「気をつけろ!」と、急ブレーキを踏んで停まったイエローキャブの運ちゃんが怒鳴ると、ボンネットを叩きながら『こっちは歩きだぞ!どこ見てやがんだ!』と運転手に食ってかかる老人までいる。
律儀なヨンのこと、信号を守るのも当然といえるかもしれない。
そんなヨンと夜の7時に向かったのは、彼が昨日、看板の塗装を終えたばかりのBAR。
『昼間に塗ったので、夜のライトが当たった色合いが分らない』と、わざわざ飲みに出かけようと言い出したのだ。
店の前で看板を見上げ、満足げに頷くヨンと共に店に入った。
『やあ!ヨン、新しい看板は好評だぜ』と、バーテンダーが声をかける。
『なかなかいい仕事するじゃないか』『今度はウチの窓枠を頼むよ』と、周りの客からも声を掛けられる。やはりここでも人気者のようだ。
『ゴールデンフィズをもらおう、ヨンも同じものを?』と俺がいうと『じゃあゴールデンとシルバーを』と、ヨンは同じレシピのドリンクをカウンターに注文した。
卵白を使うカクテルを注文した俺に対し、卵黄を使うカクテルを同時に注文したヨンは、食材やバーテンの段取りにまで気を遣っていた。なるほど人気者のはずだ。
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| written by Ipaken |
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